TK 子ども誘拐

 米国
  年間 五万八千人の子ども・・・誘拐され
うち  百十五人・・・・・・殺され
被害者の76% ・・・・・・女の子

(福井新聞 H17・12・9)
【キーワード】 誘拐 社会悪  犯罪

《参考》
ネット

2013 年 5 月 15 日 14:06 JST

 米オハイオ州クリーブランドで今月6日、別々に拉致され約10年にわたって同じ民家に監禁されていた20-30代の女性3人が無事保護され、連日大きなニュースになっている。

 保護されたのは、アマンダ・ベリーさん、ジーナ・デヘスースさん、ミシェル・ナイトさんの3人と、ベリーさんの6歳になる娘。捜査当局はこの民家に住むアリエル・カストロ容疑者を逮捕し、誘拐と性的暴行の罪で訴追した。また、カストロ容疑者が保護された女児の父親であることがDNA鑑定で確認された。

 容疑者の留守中に玄関を叩いて助けを求めていたベリーさんを近所の人が見つけ、ドアを壊して救出した。その後、ベリーさん自身が緊急通報し、駆けつけた警察によってデヘスースさんとナイトさんが保護された。ベリーさんの「誘拐されて10年間行方不明になっていたけど、今自由の身になったの!」と興奮気味に話す電話の音声には、これまでの恐ろしい監禁生活を物語る緊迫感が漂う。

 米国の犯罪というと、銃が絡む事件が取り上げられることが多いが、実はこうした拉致・誘拐事件も後を絶たない。米司法省の統計によると、行方不明者として報告される18歳未満の児童は年間79万7500人に上り、1日当たりに換算すると2185人にもなるという。

 中でも多いのは、家族による誘拐だ。日本ではあまり聞き慣れないが、離婚率の高い米国では、離婚した親同士やその他の血縁者による子供の奪い合いに起因する行方不明者が年間20万3900人と圧倒的に多い。家族以外による誘拐は5万8200人、そのうち115人が殺害、監禁、身代金などが目的の「典型的な」誘拐の被害者とされる。

 誘拐は子供を持つ親なら誰しも恐れる事件だろう。特に性的いたずらを目的とした児童連れ去りは男女問わず多発しており、今回のような事件を耳にするたびに子供達を取り巻く日常に潜む危険を再認識して恐怖心に駆られる。

 失踪児童の捜索や性的搾取の防止、被害者のサポートなどを目的に活動する非営利団体「全米行方不明・被搾取児童センター(NCMEC)」で行方不明児童部門のディレクターを務めるロバート・ホーバー氏は、子供達を被害から守るためには、誘拐防止策を早い年齢から教えることが重要だと話す。

 ホーバー氏は、誘拐されそうになった場合は、激しく抵抗したり、大きな声を出したりすれば、大半の犯人は立ち去る傾向があるとした上で、「昔は子供に大人の言うことを聞いて、それを疑わずに実行するよう厳しく教えていた。しかし、今では『ノー』と言ってもいいのだということを伝えている」という。

 同氏は、話ができるようになり、親の言っていることが理解できる年齢であれば、誘拐防止策の教育を始める年齢として早過ぎないとし、「少しでも嫌な思いをしたり、何かおかしいと感じたりしたら、すぐにその状況から離れるよう教える」必要があると述べた。さらに、「親にどんなことでも話せる関係性を築くことが極めて大切」だと指摘した。

 頻発する誘拐事件を受け、一刻も早く捜索・救助するための様々な取り組みも拡充が進んでいる。これまで対策強化のきっかけとなった事件はいくつかあるが、特に1979年にニューヨークでスクールバス乗り場に向かう途中に当時6歳のイータン・パッツくんが行方不明になった事件や、1981年にフロリダ州で当時6歳のアダム・ウォルシュくんがショッピングモールから誘拐されて殺害された事件、1996年にテキサス州で当時9歳のアンバー・ヘイガーマンちゃんが自転車に乗っている最中に誘拐されて性的暴行を受け殺害された事件などが有名だ。

 イータンくんの失踪は全米に大きな衝撃を与え、誘拐事件への関心が高まる引き金となった。広く情報提供を求めるために牛乳パックに行方不明児童の顔写真を掲載するプログラムが1980年代半ばに開始された当初に載った1人としても知られる。

 牛乳パックを用いたプログラムはすでに終了しているが、その他にも公共料金の請求書、広告、スーパーの袋、ピザの箱など様々な場所に行方不明児童が掲載されるようになった。非営利団体「全米児童安全協議会」のリサーチ部門を率いるバーバラ・ハゲット氏は、こうした取り組みによって国民の捜索に携わる意識が「一気に高まった」と話す。

 アダムくんの事件は、救助に向けた州および国単位の連携システムの欠如を浮き彫りにした。この事件をきっかけに、米連邦捜査局(FBI)が管理するデータベースに行方不明児童の情報を入れられるようになり、2006年には性犯罪者登録制度を強化する「アダム・ウォルシュ児童保護安全法」が制定された。

 そして、アンバーちゃんの事件は「アンバーアラート」と呼ばれる緊急警報システムの構築につながった。事件発生当時はこうしたシステムが存在せず、警察や目撃者は犯人の車や被害者の特徴を把握していたにもかかわらず、アンバーちゃんの救出には至らなかった。

 こうした情報を速やかに拡散できれば行方不明児童の早期発見に至る可能性が高まるとして、現在では米国の全州でアンバーアラートが利用されている。アンバーアラートが発令されると、ラジオやテレビ、電光掲示板、携帯電話へのメールなどを通じて犯人が使用している車の車種やナンバーなどの情報が地域住民に即座に伝わる。2006年の調査によると、誘拐・殺害された児童の76%が拉致後3時間以内に殺害されているため、情報の素早い拡散は極めて重要だ。

 NCMECの推計では、アンバーアラートはこれまで640人以上の児童の救出につながったという。昨年には米グーグルが同社の検索サービスと地図サービスをアンバーアラートに対応させると発表するなど、同システムは現在でも改良が進んでいる。

 今回のオハイオ州の事件のように、長期間監禁された後に被害者が救出されるケースはこれまでにもあった。例えば、2009年にはカリフォルニア州でジェイシー・ドゥガードさんが18年もの間監禁・性的虐待を強いられた後に保護され、全米を震撼させた。

 警察庁の調べによると、日本でも2011年に行方不明者として届けられた19歳以下の男女は2万人近くに上っている。犯罪関係はごく一部ではあるものの、2000年には新潟県で小学生の時に誘拐され9年間にわたって監禁されていた女性が保護されるなど、米国のケースに似た長期誘拐事件が起きたこともある。

 拉致・誘拐はたとえ無事保護されたとしても、被害者やその家族に深い心の傷を残す。当局による一層の対策強化はもちろん望まれるが、各家庭でもオハイオ州の事件を機に誘拐防止策を子供と再確認し、こうした被害に遭う子供が1人でも減るよう切に願う。

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ジェンキンス沙智(さち) フリージャーナリスト・翻訳家

 愛知県豊田市出身。テキサス大学オースティン校でジャーナリズム学士号を取得。在学中に英紙インディペンデント、米CBSニュース/マーケットウォッチ、 米紙オースティン・アメリカン・ステーツマンでインターンシップを経験。卒業後はロイター通信(現トムソン・ロイター)に入社。東京支局でテクノロジー、通信、航空、食品、小売業界などを中心に企業ニュースを担当した。2010年に退職し、アメリカ人の夫と2人の子供とともに渡米。現在はテキサス州オースティン近郊でフリージャーナリスト兼翻訳家として活動している