SC 「鸞」

 令和二年を迎える百八法句の中に
「鸞の字を書けば心のほぐれゆく 吉野松子」
という一句が特に目を惹いた。もちろん「親鸞」
聖人を思っての句であろうが、「曇鸞」大師にも思いを馳せておられるのかもしれない。
 筆者は、その「鸞」は、無量寿経の五十三仏に「次名鸞音」とあるのが、経典での初出である・・・と思っていた。
 しかし、大正新脩大蔵経(一切経)の中での使用回数を調べてみて驚く。
① 鸞  ・・・ 1186回
② 鸞音 ・・・   18回
③  哀鸞音・・    7回
④ 曇鸞 ・・・  220回
⑤ 神鸞 ・・・   21回
⑥ 鸞師 ・・・   42回
⑦ 鸞菩薩・・・    8回
⑧ 親鸞 ・・・  190回
⑨ 鸞上人・・・    3回  
 ①「鸞」の字は、②~⑨を含む総数であるが、1200回近くも大蔵経に出てきているのだ。
 ②「鸞音」は、無量寿経、大阿弥陀経などに 出ているが、③「哀鸞音」(長阿含経、普曜経、大宝積経など)というから、鸞の鳴く声(音)
   は「哀婉」なのであろう。
 ③~⑦はすべて曇鸞大師のことであり、その
   存在の偉大さがわかる言及回数である。
 ⑧「親鸞」の名が、「天親」「曇鸞」から採ら れたことはいうまでもない。それほど、親鸞 聖人は、天親の「浄土論」、曇鸞の「浄土論註」
   によって願心荘厳の浄土・涅槃の証を明らか されたのである。⑨「鸞上人」は『口伝鈔』での略称である。

  しかし、「鸞」とはそもそも何であろうか。
  辞書でみる。
☆角川漢和中辞典
【鸞】➊霊鳥の名。鳳凰の類。形は鶏に似て、羽毛は五色がまじり、声は音楽の曲律に合っているといわれる。❷天子の車につけた鈴。
      鸞車 天子の御車
      鸞旗 天子の御旗
☆フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
「鸞」 鸞(らん)は中国の伝説の霊鳥。日本 の江戸時代の百科事典『和漢三才図会』には、 実在の鳥として記載されている。それによれ ば、中国の類書『三才図会』からの引用で、 鸞は神霊の精が鳥と化したものとされている。 「鸞」は雄の名であり、雌は「和」と呼ぶの が正しいとされる。鳳凰が歳を経ると鸞にな るとも、君主が折り目正しいときに現れると もいい、その血液は粘りがあるために膠とし て弓や琴の弦の接着に最適とある。
  実在の鳥類であるケツァール(キヌバネド リ目)の姿が、鸞の外観についての説明に合 致するとの指摘もある。


      寺島良安『和漢三才図会』より

こうしてみると、「鸞」には天子に具わる威德があり、その「鸞音」には聞くものの心に染む哀婉がある。「鸞上人」の「鸞音」を尊く聞かせていただこう。
 法句もしかり。日曜学校でも、子ども報恩講で「鸞」の字を清書させている、尊い字だと教えて。  

(出典:聞法ノート 令和元年十二月)