IN 無辺光
 ー 榎本栄一『無辺光』より

○無辺光
  この眼はしだいにかすむが
  一つ ひとつの
  いのちあるものを
  つつんでは 広がる無辺光(おひかり)が
  ぼうぼうとはてもなく

○無辺の手掌
  確かに死ぬる
  人間なれど
  よくみておれば
  みな仏の手掌(てのひら)で暮らしている

○おぼろ
  念仏をもうせば
  おぼろに向こうがみえるので
  このはき馴れた下駄で
  娑婆の縁つきるまで

○念仏のりやく
  念仏もうせば
  みんな さらさら
  お光のなか
  ひっかからず さらさら
  妻や 子や 私

○自然法爾章をいただく
  義絶 善鸞さまで
  親鸞さまの御こころは
  ふかくゆれ
  醞醸(うんじよう)され 蒸留(じようりゆう)され
  はからい絶え
  自然法爾章(しぜんほうにしよう)を遺したまえり

○ぼんのう流動
  念仏をもうせば
  ふとわが我執妄念(ぼんのう)の
  みえない ふかい霧がみえ
  しばらくたちこめるが
  おのずから流動しており

○蚕捨身
  蚕は しぜんに
  少し光沢(ひかり)ある糸を吐き
  繭(まゆ)のなかにこもるが
  多くの人びとを
  助けているのは知らない

○法灯明
  そっと両手を合わせる
  お釈迦さまに 法然さま
  親鸞さま また致遠(ちおん)先生に
  あらわなる法灯明(ほうとうみよう)
  今は 有縁の
  あの人 このひとにも

○御覧くださる
  世の人びとは
  私の一部分を御覧くださる
  その背後(うしろ)に在(いま)す
  仏さまは
  私の一切を御覧くださる

○念仏はてなく
  内観念仏
  智慧の念仏と申すのは
  親鸞さま仰せの
  いろも形もなき無上仏の
  自然法爾(しぜんほうに)の
  お光の中でのこと

        
(出典 榎本栄一『念仏のうた 無辺光』
                平成2年)
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