RE 賢善の本性

 Sさんは良くできた女(ひと)だった。小学校教員を
長く勤め、仏教婦人会長歴も長く、人には愛想よく、
人望のある賢善のひとだった。若くして主人を失い、
一人娘に婿養子を迎え、やがて二人の孫娘もできる。
全員が教員。家は土地有り、借家ありの財産家。
 ところが、Sさん、晩年は老人性痴呆症になる。若
いときから、先祖の墓参りは欠かしていなかったが、
最近は、墓参の途中、他人の家の花壇から花を取っ
てきて、わが墓に供えるようになる。見つかって、小
言を言われると、今度は道端の草花を引っこ抜いて
きて、墓石の前に供えはじめ、そこは枯れ草と土の
山となる。
 そして数年後亡くなられた。
 痴呆症は病気だから仕方がない。しかし、病気にな
って理性の箍が外れると、本性がでてくるようだ。我
執、我欲という本性が出てくる。あのように立派だっ
た人が・・・という思いがけぬ行動に走る。
 人間の本性とは、かくも恐ろしいものであることを、
Sさんは示されたようだ。
                恐恐謹言。
        
(出典 愚石 聞法ノートより)
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