IN ひびきあふ 
             石川欣也師 短歌
・初日さし森羅万象ひびきあふ
   ごとき九十の春いまここに
・寒明けの上弦の月有漏の身を
   照らせば今宵こころ浄土に
・いかにせむいかにせばやと年を越え
   卒寿の春よさもあらばあれ
・石蹴りをたのしむ子らに目を細め
   遠き昭和の子どもに返る
・春の夜の受話器に聞きし師の終(つい)の
  導き今もあざやかにあり
・たまゆらに眠りしかなやふと目ざめ
   朝か夕べか昼をとまどふ
・やわらかに空気にとけてまどろめば
   いつしか念仏のやすらぎにゐる
・うつせみのいのちの際を何色に
   染めて終らむいのちの余白
・三歳の曾孫が習はぬ経を読み
   御堂和める四代の夕べ
・風かをる道歩み来て名も知らぬ
   小草(おぐさ)目にとめふと手に愛(め)づる
・一文字も手書きの文字のなき便り
   世に流さるる友いたはしや
・「詳しくはホームページ」の世となりて
   アナログわれは消え去るのみか

(出典 大和郡山市 石川欣也
    『大乗歌壇』)
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