IN 弔 句 随 縁

『句仏句集』より
昭和二年 柳川氏が幼児を失ひたるに
 落椿ほども音せぬ本意なさよ
昭和二年 静堂子の死を哭す
 朝顔は儚なき花と知りながら
昭和四年 涙骨子が婿の訃を聞きて一人娘の淋し     
   さを思ふ子が胸中を察す
 コスモスの淋しすがたに泣かされて
昭和五年 常観御房が坊守の母を悼む
身も共に浄土に遊ぶ小春かな
昭和六年 弔友人母堂
人の世の散る花に飽きたまひけん
 春水に長き灯影や浮寝鳥
智善御房が子を失いしと聞きて
 秋風や殊に悲しき夕餉時
   小蛄子が長男を悼む
つまされて泣く風鈴の秋の音に
昭和七年 孤島子が女を悼む 
 我事のやうに悲しき霜夜かな
昭和八年 政子が祥月命日に
在りし日を火桶に語る妻と我と
八九子を悼む
 秋晴るる浄土の写生問はんかな
昭和十一年 小弟得痴が急逝の報に接し忽忙と西
       下し葬に列す
 心残りを泣く夜暮春の雨の音
 逢ひたかり汝も逢ひたくぞ春尽きぬ
      悼
 蓮の葉を辷る露ほどの生涯や
 糸瓜忌や紫苑の雨の冷かに
      三幹竹の老父を悼む
 蓮なほ咲くにうたてし初嵐
昭和十二年 西の丘子を悼む
 栗はまだこれからじゃのに気せはしく
昭和十三年 家来辰一の死に
 夢のよな別れなりける春寒し
      知成御房の死を悼む
 浅春の空晴れながら淋しき日
昭和十六年  悼
 今年ちる花の行方は浄土まで
      近角常観御房を悼む 
 残る我寒し浄土へ足早に


【『一々華』 藤 光曜猊下 句集 より】
白虎隊烈士墓参
 香薫じ 業繋(ごうけ)悲しく 花樗(おうち)
  野口英世博士に
 衆の爲 衆に死したり 風光る
  義弟(高倉永輝氏)の死を悼みつつ
 送り火の 涙にかすむ 念佛かな


【『生かされて』 藤枝英子句集 より】
  (昭和天皇崩御)
平成元年  大君のみまかりし夜の寒の星
        (亡夫戦死の地を訪ね)
平成六年  大夕焼ルソンの君よ現れ給へ
        (義弟純円師往生す)
平成十二年 涅槃西大往生の僧なりし




   俳人・川崎展宏を悼む
息やめてしまふが別れ掛布団   長谷川櫂

天地の間にほろと時雨かな    虚子
  昭和十七年十一月二十二日
  長泰寺に於ける花蓑追悼会に句を寄す。
   鈴木花蓑の追悼句会の句である。

発ち満せし君が遺墨や鶴凍る      典子

美しき君は在さで雪の朝      森 孝純

寒ぼたん力抜かざる白さかな    喜代恵

千年の寿逝く旅立の名ごり哉    八十八翁

絵と句の宗匠逝きぬ名り雪       

笹鳴の大いなる訃を悲しとも   正木 園栄

大寒を日々好日と黄泉の旅

寒梅にホ句の仏と示寂たり        

大寒の天へ昇りし墨の龍    田中 みのる

寒椿落ちてなほ燃ゆ人の逝く     すみ子

風花舞ふ天のどこまで逝かれしや   美智子

微笑みの忘ることなき寒に入る   佐藤 和子

冬薔薇豊なる才惜しまれて    

忘れまじ貴女の笑顔さくら草     敦子

天空の深部を目指し鶴の翔つ      桂子

寒星の一つとなってほほ笑めり      

初雪にのりて惜しまれ黄泉へ旅     清子

瞑れば笑顔泛びし寒の月         

ほほ笑みの気高く白し寒の菊      久子

美しき丹頂一羽翔ちにけり        喬

西方へ明るき星の流れけり        

父の忌に青鷺去りて千の風    西川 翠風

初雪やあまたの天使舞い降り   平田 公彦



麦浪忌献句

駆け抜ける刻の迅さや麦浪忌   的場秀恭

和尚逝き四十七年麦浪忌     森 一心

すこやかな衣子姉のゐて麦浪忌  大平久子

一つ増す柿の年輪麦浪忌   あめ・みちを

天上に侍る愛弟子麦浪忌  長清水美代子

照子姉のあの笑顔亡き麦浪忌 平橋道子

嘴の痕ある熟柿麦浪忌  梶谷予人

故天日照子様へ弔句

天の日の翳りてよりの寒さかな  的場秀恭

新たなる忌日へ冬が音もなく  家永衣子

鵙一声照子姉逝くを惜しみけり  森 一心

照子姉の大きな空席麦浪忌    大平久子

冬うらら照子姉も居る黄泉の句座  
               あめ・みちを
麦浪忌姉の達筆のまなうらに   香田きぬ

振り向かず花野へ消ゆる静かな背  
               長清水美代子
それとなく別れ告げしや木の実雨  高原疆次

秋天や夫の許へ行きませり  平橋道子

照子姉と語りゐるかも鵙高音  梶谷予人


        
(出典 『句仏句集』
  藤光曜『一々華』
  藤枝英子『生かされて』)
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    俳人・川崎展宏を悼む
    麦浪忌献句
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