IN かすかな余韻
=榎本栄一『常照我』より

☆かすかな余韻
 あの人も逝き
 この人も亡くなり
 遠い山のお寺の鐘のような
 かすかな余韻が
 私のとこころにしみる

☆煩悩火けむり
私の煩悩の火けむりは
 ナントカしおうと
 手だしをすると巻きこまれ
 ただなむあみだぶつ
 火けむりゆらゆら

☆もちじかん
私の持ち時間が
 残りすくないのに気づき
 このすくない時間が
 まだ 私の両手にゆれ
 かすかに光り

☆いのちひろびろ
突っかい棒が
 ひとつ またひとつ
 ひとりでにはずれ
 いまは わがいのちひろびろ
 さて これから

☆奈落でしか 
私は何べんも落ちこむが
 このお光は
 この奈落でしか
 拝めない

☆ジャコ捨身
ある日 このジャコは
 無量のいのち涌く大海から
 身を捨て
 いま 人間界(ひとのよ)の私の
 口の中まできてくださる

☆弥陀といっしょ
行き詰まってうごけぬので
 うごかずにいたら
 阿弥陀さまもここで
 私といっしょに
 うずくまって御座った

☆念仏のりやく
 念仏もうせば
 この愚昧(おろか)な眼がひらき
 自分のぼんのおうが
 みえはじめる
 ここからが かたじけない

☆諸仏囲繞(しよぶついによう)
 ぐるりのひとたちからは
 私の執着心(とらわれ)を
 ふと教わる
 諸仏は いつも私のぐるりに

(出典 榎本栄一『常照我』昭和62年4月)
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