IN わたしは速達便

こんなに急いでいいのだろうか
田植えする人々の上を
時速二百キロで通り過ぎ
私には彼らの手が見えにあ
心を思いやる暇がない
(だから手にも心にも形容詞がつかめない)
この速度は速過ぎて間が抜けている
苦しみも怒りも不公平も絶望も
すべては流れゆく風景
こんなに急いでいいのだろうか
私の体は速達小包
私の心は消印された切手
しかもなお間にあわない
急いでも急いでも間に合わない!
              谷川俊太郎 

(出典 谷川俊太郎)
【キーワード】 現代 速度 人間疎外
        急ぐ