HY なお存在せりや

観無量寿経に、「時に阿闍世、守門者に問う、『父王は
今猶存在せりや』と」という一文がある。
この「猶存在耶」という言葉、我々、長寿社会にかなり
つぶやかれているのではないか。「まだ死なずにいる
のか?」と。

 小学校同級生のH子さんは、5-6年前の同級会に
きて、姑の介護で表彰されたと、得意気に話していた。
ひとくだり済んだとき、ふと彼女が側にいたので、そっと
聞いてみた。「猶存在耶」という気持はでなかったです
かと。すると、彼女、ちょっと顔を曇らせ、一瞬口を結ん
だあと答えた。「やはり、ありましたわ」と。

 他人事ではない。わが母親が二年ほど要介護となっ
たとき、やはり、「猶存在耶」と思ったことが何度かある。
 恐ろしい言葉だが、それが出てくる。我が地獄性の現
れである。地金はなおらない。
 しかし、頻婆娑羅王も死後空中に現れて、阿闍世を励
ましたという。
 老母も、見舞う私の身体を、何度もいたわってくれた。
 親を「殺す」ような子を、親はなおも愛するのである。

(出典 宏壽 聞法ノート)
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