HY いのちと風船

東京ビハーラの会の副会長田久保園子さんは太平洋戦争
の始まった年、佐賀県の浄土真宗の寺院に生れたが、9
歳のとき肺結核に冒されていることがわかり、寺の離れに
隔離され、一人さみしく寝ていると、死の恐怖にかられる
ー古い底なしの井戸にまっさかさまに落ちていくようなもの
だろうか、と。真夜中に悲鳴をあげて怖がる。
 住職である父が、いくつもの風船を膨らませて言った。
「園子、いのちはね、死んでも決してなくならないんだよ。
 ここにいろんな色の風船があるね。青い風船はお父さん、
黄色いのはお母さん、白いのはおばあちゃん、そして赤い
のは園子、お前だよ。
 今は空気がいっぱい入ってパンパンに膨らんでいるけれ
ど、いつかはしぼんでしまうし、いつパーンと破裂してしまう
かもしれないね。
 でもね、中に入っていた空気はなくなるんじゃないよね。
中の空気は外の空気に合流するだけだよね。
 いのちも同じなんだよ。身体がなくなっても、形は変わっ
ても、中のいのちは外のいのちに合流するだけ。
 合流したいのちは、また新しいいのちを創るはたらきにな
るんだよ。
 だから、死ぬことを恐れなくてもいいんだよ。
 たとえ、風船がなくなっても、中の空気はいつもみんなと
いっしょにあるんだから」

 この話を聞かれた田久保さんは、それまで懐いていた死
への恐怖感がすっかり消え、一瞬のうちに目の前が光輝
いたということです。

(出典 光明寺テレホン法話第6集)
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