HY ほめる(嫁姑問題)

 嫁姑問題を解決した和尚の知恵

 同じほめるのだが、自分をほめるのと、人をほめるのとではまる
で違う。ただ、自賛は抑えようとしてもつい、つい、してしまうのに、
人をほめるのは心掛けてもなかなかできない。口先だけでほめ
るお世辞は本当にほめるのではないが、それでもなかなかうまく
できない。商売をする人は、そのお世辞を使って客をとらえる。客
はお世辞とわかっていても、悪い気はしない。あいその悪い店の
ことを、「お世辞ひとつ言わない」と悪く言う。

 ある家庭のお嫁さんはおしゅうとめさんとの折り合いが悪い。そ
んなことはすこしも珍しくない。伸のいい嫁、しゆうとめがあれば、
それは異例だとしてよい。おしゅうとめさんは愛する息子を嫁にと
られたように思うことが多い、ライバルである。心をかよわせるこ
となどできるわけもない。そういうことを知らないで、自分だけが
苦労するように思い込む。
                      このお嫁さんが、すこし変わっ
た和尚にうっかり悩みのタネのおしゅうとめさんのことを話した。
和尚はいたずらっぼく、「いいことを教えましょう。お母さんと仲よ
くなれますよ」と笑った。そして、おしゅうとめさんのいいところを
言ってみなさいと促したが、お嫁さん、いやなことばかりで、いい
ところなどひとつもないように思われたが、考えに考えて、やっと、
思いついたことがある。なにかしてあげると、かならず、口先だけ
だが、「ありがとうね」と言うのである。ふだん、そう言われても、
本心ではなく、むしろ、皮肉のように考えていたが、感謝のことば
だと考えられる。そんなことを和尚に話す。
 和尚は、そのことをたまたま寺へやってきた他家のおばあさん
に話した。あの家の嫁は、おしゅうとめのことを、礼儀正しい、し
つかりした人だとほめていた、ということを話した。それをきいた
おばあさんが、いわゆる〝放送局″で、きいた話を会う人ごとに
しゃべる。たちまち広がった。もちろん、おしゅうとめの耳にも入る。
おしゆうとめはおどろいた。あんなにくらしい顔をしているくせに、
案外、心やさしいところもあるんだわ、ちょっと誤解していたかもし
れない。あの女もいいところがある。
 おしゅぅとめがほかの〝放送局″に話すと、これまた、話に尾
ヒレがついて広まる。
 そうして、この嫁とおしゆうとめはすっかり打ちとけて互いにい
たわり合うようになった。和尚の作戦はみごと功を奏したのであ
る。かげではめた形になったのがとくに効果的だったのであるが、
とにかくほめるということの威力を認めなくてはならない。

参考
 シテミセテ
 イッテキカセテ
 サセテミテ
 ホメテヤラネバ
 ヒトハウゴカジ
山本五十六元帥
 ホメテヤラネバ
 ヒトハウゴカジ
 ホメレバ
 ブタガキニノボル
某老教師の蛇足

(出典 筆者 外山滋比古『マイナスのプラス』 講談社)
【キーワード】蔭で褒める (慈悲)喜(捨)
 嫁姑