HY どの指なめた

某医学部教授、医学生に医師としての心得を説いた。
1 正しい目と耳で、患者をよく観察せよ
2 勇気をもて
 その後、「今の話が分かったかどうかテストする」といって教授は
実験を始めた。
 黄色い液体の入ったビーカーを机の上におき、
「これは、患者から採取した尿である。昔の医者は、自分の舌で
患者の尿を試して調薬したものだ。今から私もそれをやってみせ
るから、君達も一人ひとりその通りやれ。それが出来ない者は医
者にはなれぬ」といって、学生を見回す。誰も彼も顔を見合わせて
怖がる、特に女子学生は。
 「さあいいか、よくみておれよ」と教授はいって指を一本尿につけ、
引き上げて嘗めた。
 学生は、まさかと思いながら、戦々恐々。
 「さあ、一番前の君から始めなさい」
 「どうしてもやらねばならんのですか」
 「そうだ」
云われた学生は、目をつむって教授のしたとおりちょっとだけ尿に
つけた指をなめた。
 「さあ、次だ。」・・・
このようにして、尻込みする学生全員にその実験をさせた後、教授
いわく
 「全員落第だ。医者にはなれない」
 「どうしてですか。先生の言われたことを、  嫌なのを仕方なく肚
を決めてやってのに」と学生は猛反撃。
 「いや、誰もわしの云ったとおりやっていな  い。わしは何といっ
た?自分の目でよく観  察しろ、よくみておれよ、わしのやるよう 
にやれと云ったのに、誰もそれを守ってい
  なかった。
   もう一度わしのしたことを繰り返すから
  よく見ておれよ」
 教授はそういって、もう一度、ビーカーの中にゆっくり人差し指を
いれた。そして今度は、学生によく見えるようにゆっくり中指を立て
て口にくわえた。
 それを見た学生は一斉に「ブー、ブー」
 教授はすまして、「諸君はみな勇気はあったが、
しっかり観察をしていなかった。それが落第点
だ」といったという。

(味わい)大経下巻に五眼のくだりがある。
 「肉眼清徹。靡不分了。天眼通達。無量無限。
  法眼観察。究竟諸道。慧眼見真。能度彼岸。
  仏眼具足。覚了法性。」
 浄土の菩薩の五つの眼の確かさをのべている。
肉眼でさえも澄み切って、見分けできないものはないと云われて
いるのだが・・・ 我々欲界
にいるものは、心ここにあらざれば見れども見えず。尿をなめねば
ならぬという恐怖心が先行して、観察の眼は鈍っていた。この実
験でなくても、たとえば、自動車事故などの派生原因は
見たつもりがよく見ていなかったといことなど
が多い。自分でも、一端停止して、左右を見た
つもりでいて、出ようとして急に接近してくる
車に気づき、急ブレーキを踏んだ経験がある。
何か、考え事していたりすると、「心ここにあらず」
 人間の肉眼ひとつでも、このように不備なもの。ましてや、天眼
(先を見通す眼)など得られるはずもない。
 凡夫の限界を心すべきである。

(出典 宏壽 聞法ノート 誰かの法話?)
【キーワード】観察 勇気 看過
   パニック 肉眼 五眼 尿 嘗める