HT 白楽天と道林禅師

 昔、中国に白楽天(本名は白居易、772年(大暦7年)- 846年(会昌6年)、中唐)
という詩人がいた。その白楽天が、これまた仏教で名高い道林禅師(鳥?道林
(741年 - 824年)、中国・唐代の禅僧)を訪ねた。
 道林禅師は松の木の上で生活しながら、仏教の真髄を追及したと伝えられる
高僧。白楽天はこの禅師に会う機会を待ちかねていた。
 白楽天が江西省の知事になって、秦望山に道林を訪ねることとなった。

白 「そんな高い所での生活、危ないぞ」
道 「危ないのはそっちの方だ」
白 「木の上が危なくなく、地上が危ないとは何故?」
道 「仏教を知らず、心の定まらぬ者は、地上にいても危ない」
白 「その仏教とは何か?」
道 「諸悪莫作 衆善奉行 自浄其意 是諸仏教(諸もろの悪は作さず、
   衆もろの善を奉行し、自らその意を浄よめる、是れ諸仏の教えなり)」
                                    (七仏通戒偈)
白 「斯様な事は三歳の童子でも知っている」道 「三歳の童子これを知る
   といえども、八十の老翁なおこれを行うこと能わず」

白楽天は心を打たれて返す言葉を失い、やがてその意を理解し、竹閣(広
化寺)を建て、以後、朝に夕に訪れては、参禅したという。

(出典 宏壽『聞法ノート』)
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